第10章

壁に寄りかかり、書斎の中から漏れてくる重いため息に耳を澄ませていた。和也が部屋に籠ってから、二時間が経っていた。この残酷な真実を受け止めるには時間が必要だと分かっていたけれど、その一秒一秒が、心臓をナイフで抉られるような感覚だった。

やがて、ドアが開いた。

そこに立っていた和也は、目を赤く腫らし、髪は乱れていた。私がまだ廊下で待っているのを見て、彼の表情に、嵐のような感情がめまぐるしく移り変わった。

「まだ、いたのか」彼の声は掠れていた。

「どこにも行かない」私は彼をまっすぐ見つめて言った。「あなたが出て行けって言うまでは」

和也は苦々しい笑みを浮かべた。「そうすべきだっ...

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